ブランド戦略の事例を知る

文化と人が出会う交差点

2026/03/13

 

 

アメリカと沖縄が溶け合うショッピングセンター

沖縄市に日本初、かつ最古のショッピングセンター「プラザハウス」がある。1954年、沖縄がアメリカ統治下にあった時代に誕生し、今なお多くの人が訪れる、異国情緒あふれる場所だ。
アメリカンレトロな看板に建物、大きく広がる路面駐車場、開放的なアーケード。国内外の食品やファッション、ライフスタイル雑貨やインテリアを扱うインポートセレクトショップ「ロージャース」を核に、多様なジャンルのレストラン、ネイルサロン、映画館、フォトスタジオとさまざまなショップが揃う。まるで旅をするように異文化と出会えるここは、商業施設の枠におさまらない魅力にあふれている。
異国情緒ある独特の佇まいに惹かれてか、メディアの撮影やイベント開催の申し込みも多い。外国人の買い物客も多い一方で、地元のおじい、おばあたちがのんびりとおしゃべりをしている。雑多であたたかい雰囲気はどこか懐かしい。稀有な存在感を持つこのショッピングセンターはどのように誕生したのだろうか?

 

プラザハウスショッピングセンターの誕生

プラザハウスの創業者は米軍基地内でレストランとテーラーを経営していた香港人のチャールス・シー・ショーン氏で、ショーン氏は1954年7月、外国製品を販売する「プラザハウス」と沖縄初の広東料理店「月苑飯店」を開業した。この「プラザハウス」が現在の沖縄市久保田の地にプラザハウスショッピングセンターの起点となる店舗であり、琉球政府より特別免許を取得し、主に在沖米軍とその家族を対象にしていた。その隣に、米国人ロージャー・シー・ウイリアムズ氏が東京から化粧品などを扱う「ロージャース」を移転オープン。すでにレストラン、ギフトショップの営業をしていたプラザハウスと、2つの店舗の間を連ねるように新しい店が立ち並び、現在のプラザハウスショッピングセンターの原型が整った。
当時、外国の最新ファッションやライフスタイルが沖縄にもたらされ、県民は大きな衝撃を受けた。沖縄を訪れる日本人観光客からは、唯一の外国商品専門店のショッピングセンターとして定番のショッピングコースになった。沖縄が日本に復帰してからは外国商品を中心に沖縄の民芸品を取り扱うようになり、1974年ホテル内ショップ開設にあたり、日本法人として「株式会社プラザハウス」が設立された。ひとりの外国人が開いたプラザハウスは、今や在米軍関係者、観光客、県民に深く愛される存在になっている。

 

沖縄と世界をつなぐ交差点のような役割

プラザハウスは2024年、創業70年を迎えた。株式会社プラザハウスの平良由乃代表取締役社長は、「プラザハウスは、今も昔も沖縄と世界をつなぐ“文化の交差点”」と言う。
「私の父が社長に就任した1986年以降、それまで以上に多角的な経営に取り組みました。ロージャーズはただの物販ではなく、質の高い世界文化を沖縄に紹介する場です。私たちは海外の良いもの、日本の良いものをちゃんと届けて、それらと肩を並べられるような沖縄の良いものを育てたいと常に考えています。マチグヮーにはマチグヮーの良さがあるし、プラザハウスにはプラザハウスの良さがある。プラザハウスに求められる役割として、“沖縄の地に国際文化が出会い、新しい価値が生まれる場を作ること”を事業の核としています」
輸入品や民芸品を販売するだけでなく、プラザハウスならではの付加価値を付ける。ストーリーをつむぐ。プラザハウスでのショッピングは、世界文化との出会いがある。

 

 

プラザハウスらしいフードマーケット

では、プラザハウスではどのようなものを販売しているのか? 現在のコンセプトは「旅するように生きる。Every day is a journey.」。長い歴史の中で沖縄が育んできた文化や風土と世界の文化が交わることで、自然と「人生をより良く生きる」ウェルビーイングの価値観が生まれていった。それを象徴するのが、素材から製法までこだわり抜いた「くがにちんすこう」、県産黒糖を使った「ブラウンシュガーファッジ」などのオリジナル商品だ。こだわりのパッケージデザインからもプラザハウスのブランドメッセージ「次世代が誇れる沖縄の味」を強く感じる。

また、これら食品を販売する直営のフードマーケットは2019年のオープン。近隣に全国展開する大型ショッピングセンターがオープンし、それまで入っていた地元スーパーが撤退した。後継店が決まらない中、平良さんは「全国チェーンのスーパーには量も客数も競わない。小さくても食の豊かさを感じてもらえる店を作ろう」と思い切った。アラブのスーク(市場)をイメージしたという店内は異国情緒があり、珍しい調味料や缶詰、ワイン、惣菜などがにぎやかに並んでいる。沖縄に良いものをと選び抜いた商品が並ぶロージャーズフードマーケットは、今では観光客もこぞって訪れる人気店となった。

 

 

 

オリジナルグッズも人気

フードマーケットだけでもかなり幅広い品揃えだが、ファッションや香水などの取り扱いもワールドワイドだ。1892年創業で、創業時から変わらず職人が一貫して生産するフランス最古のデニムブランドは外国人・日本人問わず人気が高い。

香水コーナーでは観光戻税制度※承認店だったころから取り扱うものや、国内ではここでしか手に入らないものも多い。また、意外なことに土産品店でよく見かけるような、紅型や沖縄の植物写真、沖縄の方言などをあしらったクリアファイルもプラザハウスオリジナルで作られている。

※観光戻税制度は、1972年の本土復帰から2002年まで実施された、沖縄の観光振興のための沖縄独自の免税制度。

プラザハウスのロゴを入れた文具やバッグも販売している中、特に人気なのがロージャースフードマーケットのオリジナルバッグ。ストライプにロゴが入ったデザインが特徴で、よく売り切れている。2025年夏には、ロージャース初の企業コラボとして、JTAオリジナルデザインのトートバッグを制作し、機内販売された。こちらも大人気でまたたく間に売り切れたそう。今後、第二弾も企画されている。

 

 

プラザハウスは架け橋

プラザハウスはこれまでにもさまざまなチャレンジを続けてきた。世界的な筆記具ブランド「PARKER」とコラボレーションした「琉球漆器万年筆 パーカーデュフォールド 沖縄堆錦リミテッドエディション対龍」は、堆錦という沖縄にしかない伝統技術を使った見事な逸品で話題になった。さらに世界で88本、国内では60本限定販売にし、付加価値を高めた。平良さんは「沖縄の文化が世界レベルの価値と美意識を持つことの証明になりました」と、ほほ笑む。
また、琉球漆の艶やかさを活かし、モダンにアレンジした「琉球漆アクセサリーOKINAWA TOUCH」は、パリで人気のコスチュームジュエリーデザイナーと共に創り上げ、沖縄の伝統的工芸である琉球漆のイメージを一新。琉球漆の可能性を広げた。
ほかにも、プラザハウスを通して世界と沖縄のアーティストたちをつないできた。紅型作家の宮城守男氏、新垣優香氏、琉球絣の染織家であり琉球藍によるデニム開発を手掛ける大城拓也氏。プラザハウスは第一線で活躍する彼らに世界への道を開く手助けをした。
平良さんはブランディングのきっかけを「作る人とちゃんとつながりたいと思ったから」だと話す。そして販売事業のことを「買い手と商品の架け橋」と評する。
「プラザハウスがある沖縄市は戦後から続く琉米文化の象徴的な場所です。その歴史や価値をポジティブに語り直し、若い世代や観光客が自然と集まり、誇りを感じられる拠点でありたい。未来の沖縄を豊かにする文化づくりを担うためにも、地元企業や職人、アーティストと一緒に“沖縄らしさを世界へ翻訳するプロジェクト”を続けていきます」

 

株式会社 プラザハウス

本社住所    〒904-0023 沖縄県沖縄市久保田3丁目1番12号

WEB      https://plazahouse.net/