ブランド戦略の事例を知る
ハイビスカスがつなぐ、今帰仁からのものづくり
2026/03/24
![]()
- ▼目次
- -自然豊かな今帰仁村で始まった、夢のある仕事
- -暮らしの知恵から生まれたハイビスカスの恵み
- -有機JAS農園が支える原料づくり
- -沖縄の植物素材から生まれる製品
- -ホテル業界での経験が広げた信頼
- -学校や福祉と連携した地域とともに続く取り組み
- -今帰仁から世界へ広がる沖縄ブランド

自然豊かな今帰仁村で始まった、夢のある仕事
沖縄には、自然とともに暮らす中で育まれてきた植物文化がある。身近な植物を美容や健康に生かす知恵は、長い年月をかけて受け継がれてきた生活の知恵だ。
その伝統を現代のものづくりへと生かし、沖縄ブランドとして発信している企業が今帰仁村にある。ハイビスカスや月桃など沖縄の植物を原料とした化粧品を製造・販売する「ゆめじん有限会社」だ。
沖縄本島北部、やんばるの自然に抱かれた今帰仁村。海から吹く風と温暖な気候に恵まれたこの土地で、沖縄の植物の力を生かした製品づくりが続けられている。
1997年、創業者の諸喜田 篤さんは、この自然豊かな今帰仁村に魅力を感じ、「この土地で夢のある仕事がしたい」という思いから会社を立ち上げた。その思いを込めて名付けられたのが「ゆめじん」という社名である。

暮らしの知恵から生まれたハイビスカスの恵み
かつての沖縄の女性たちは「くちゃ」と呼ばれる泥で髪や頭皮の汚れを落とした後、ハイビスカスの葉から出る粘液を使って髪を整えていたという。
この粘り気のある成分には保湿作用があり、髪をしっとりと艶やかに保つ働きがあるとされてきた。ゆめじんのものづくりの原点は、この伝統的な知恵にある。
先代の篤さんの想いを引き継いだ諸喜田 栄さんは、幼少期に母親がハイビスカスを髪の手入れに使っていた姿を見て育った。その経験から「この植物の力を現代の化粧品として生かせないか」と考えたという。
そこで着目したのが、ハイビスカスの葉から抽出される天然の保湿成分だった。自社の技術でエキスを抽出し、シャンプーやトリートメント、スキンケア製品として商品化した。沖縄の暮らしの知恵を現代の製品としてよみがえらせる。それが同社のものづくりの出発点である。

有機JAS農園が支える原料づくり
ゆめじんの製品づくりを支えているのが、今帰仁村にある自社農園。約8000坪の農地で、ハイビスカスや月桃が栽培されている。この農園は国の基準を満たした有機JAS認証を取得している。有機JAS認証を取得するためには、化学肥料や農薬の影響を受けない環境を維持する必要があり、周辺農地の状況にも配慮しながら管理しなければならないため、取得は容易ではない。県内でも植物栽培で有機JAS認証を取得している農園は限られており、希少な存在だという。


沖縄の植物素材から生まれる製品
ゆめじんでは、ハイビスカスを中心に沖縄の自然素材を生かした製品開発を行っている。
ヘアケア製品はハイビスカスエキスを配合したシャンプーやトリートメントを展開し、髪と頭皮をやさしく整えてくれるのが特徴だ。
またボディケア製品には、離島の小さな製糖工場から仕入れた純黒糖を原料にしたエキスを配合したボディソープもある。精製されていない黒糖から抽出した成分を使用することで、高い保湿効果を実現している。
さらに同社を代表する商品が「今帰仁ウォーター」。琉球石灰岩から特殊製法でミネラル成分を抽出したミストで、香料や添加物を加えないシンプルな処方が特徴だ。
沖縄の自然素材を最大限に生かす。それがゆめじんの商品づくりの基本姿勢なのだ。

ホテル業界での経験が広げた信頼
ゆめじんの商品は現在、多くのリゾートホテルやヴィラでも採用されている。
その広がりを支えたのが営業部部長の山入端 隆さんだ。山入端さんは、オクマプライベートビーチ&リゾートやオリオンホテルモトブリゾート&スパなどで約40年にわたり接客サービスに携わってきた、ホテル業界のプロフェッショナル。
現役時代にゆめじんの商品に出会い、その品質の高さに惹かれてホテルの売店などで取り扱うようになったことが、同社との縁の始まりだった。
「実際にお客様に紹介してみると、とても反応が良かったんです。沖縄の植物を使った商品という点にも魅力を感じました」と山入端さん。
その後、ゆめじんに入社し、ホテル業界とのネットワークを生かしてブランドの認知を広げてきた。最初にアメニティとして採用したのは、かつて勤務していたオクマプライベートビーチ&リゾートだった。「沖縄には素晴らしい素材や文化がたくさんあります。それをきちんと伝えていくことが、沖縄の価値を高めることにつながると思っています」と山入端さんは語る。

学校や福祉と連携した地域とともに続く取組
ゆめじんでは地域とのつながりを大切にした活動にも取り組んでいる。
地元の小学校と協力し、子どもたちが農園でハイビスカスの葉を収穫する体験学習を実施。葉を刻んで水に溶かし、粘液が出る様子を体験することで、沖縄の植物文化を学ぶ機会をつくっている。
また地域の社会福祉協議会と連携し、商品のパッケージ組み立て作業を障がいのある方々に委託する取組も行っている。これは働く場をつくり、地域で安心して暮らせる環境づくりにつなげたいという思いから始まったものだ。
コロナ禍の時期にはアルコール消毒液の不足が社会問題となったことを受け、月桃精油と月桃蒸留水を配合した除菌スプレーを開発。オンラインショップで販売し、売り上げの一部を村内の学校へ寄付するなど、地域に貢献する取組も行った。
今帰仁から世界へ広がる沖縄ブランド
現在、ゆめじんでは新しい工場の建設を進めている。ハイビスカスは台風の影響を受けやすく収穫量が限られるという課題を、生産体制を整えることで解決し、より多くの人へ製品を届けたいと考えている。
また今後は農園見学や収穫体験、月桃の蒸留体験など、沖縄の植物文化を体験できるプログラムの展開も構想しているという。
自然豊かな今帰仁村で「夢のある仕事をしたい」という思いから生まれたゆめじん。その挑戦は、沖縄の植物文化と地域の物語をのせて、沖縄ブランドの新たな価値を届けている。今帰仁の風土に根ざした小さな植物の力は、やがて沖縄の魅力そのものとして、国内外へと広がっていくに違いない。
ゆめじん有限会社
住所 〒905-0427 沖縄県国頭郡今帰仁村字兼次18-2