ブランド戦略の事例を知る
選ばれる理由を追求する「ファミンチュ」戦略
2026/03/23
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- ▼目次
- -沖縄の人がつくる、沖縄のためのコンビニ
- -宮古島の教訓から始まった「地域ド密着」への転換
- -ブランドの核は「ファミンチュ」
- -より質の高い立地で物理的距離を縮める
- -沖縄の味は沖縄で磨く、商品戦略
- -失敗を恐れず、打席に立ち続ける文化
- -コンビニの枠を越えて社会インフラ整備にも貢献
- -目的地化という次の挑戦

沖縄の人がつくる、沖縄のためのコンビニ
朝の出勤前。仕事の合間に立ち寄る昼下がり。仕事帰りの夕暮れ。飲み会後の深夜。気づけば、私たちの暮らしのすぐそばにある沖縄ファミリーマート。全国統一の緑と白と青の看板に引き寄せられて店内に入ると、ポーク玉子や沖縄そばなどが並び、「全国チェーン」という言葉だけでは語りきれない、プチ沖縄旅行が楽しめる空間が広がっている。
1987年に設立された株式会社沖縄ファミリーマートは、沖縄県内のフランチャイズ権を保有し、加盟店への運営委託を中心に、営業支援や商品開発、商品供給を担っている。店舗数は沖縄本島に295店舗、宮古島・石垣島・伊江島・久米島などを含め合計337店舗(2025年12月末)。売上高は、10年ごとに大幅に伸び続け、2019年には沖縄観光ブームを背景に過去最高800億円を突破した。
数字だけを見ると堅実な成長を印象づけるが、セブン-イレブンの沖縄進出を機に市場環境は一変。沖縄は2019年7月時点で、人口10万人当たりのコンビニ数は全国45位と緩やかだったが、現在は全国3位の激戦区へと変わった。そこで問われたのは、「選ばれ続ける理由」を持てるかどうかだった。
宮古島の教訓から始まった「地域ド密着」への転換
市場の激化に対し、同社が掲げたのが「地域ド密着」というコンセプトだ。ただの地域密着ではない。「ド」には、本気で沖縄ファミリーマートらしさを育て続けるという誇りと覚悟が見受けられる。その原点は、2000年の宮古島出店にあると、同社の岸本国也経営戦略本部長は、当時を振り返る。
「宮古島進出の2000年頃には、沖縄本島ではファミリーマートの知名度もあり、出店には自信を持っていました。しかし地場に根づいた競合店に及びませんでした。全国のやり方をなぞるだけでは勝てないと痛感し、独自の商品やサービス、店舗開発を考え直そうと独自戦略に取り組みました」
この経験から生まれたのが、「沖縄のやり方で勝つ」という発想だった。全国で展開している中央の正解ではなく、沖縄の感性を起点にした独自戦略。その転換が、現在のブランド戦略の礎となっている。

ブランドの核は「ファミンチュ」
ブランド戦略のテーマは「ファミンチュだからできること。」。「ファミンチュ」とは、社員、加盟店、取引先、そして地域の人たち、沖縄ファミリーマートに関わるすべての人を指す言葉だ。
「沖縄の最大の魅力は人、すなわち、ウチナーンチュの柔軟性と懐の深さにあると思います。ウチナーンチュの人間性こそが沖縄の力であり、企業活動の土台になっています」と岸本さんは話す。ブランドとはロゴや広告ではない。人との関係性の積み重ねこそが、選ばれる理由になる。その想いが、このテーマに込められているのではないだろうか。
より質の高い立地で物理的距離を縮める
具体的なブランド戦略は、「物理的距離」と「心理的距離」の2つの距離の近さを核に、進められている。
物理的距離とは、「店舗数」と「立地の質」だ。同社が追求する店舗数は、単なる拡大にとどまらない。売上も利益も順調だった既存店舗を、約85メートル離れた、より良い立地に移転。結果は、主要指標が約25%アップ。利益も順調に拡大した。「今、うまくいっている」ことに甘えず、立地の微調整を積極的に行うことで、もっと便利に、もっと暮らしの中へ、利便性を提供する姿勢こそが、物理的距離の追求だ。

沖縄の味は沖縄で磨く、商品戦略
もう一つの柱、心理的距離の近さは、「顧客満足」と「地域貢献」の2つだ。開発の最優先ターゲットは、常に沖縄県民。県民に愛される商品こそ、観光客にとっても魅力となるとの考えのもと、ウチナーンチュの開発担当者たちが、沖縄でしか買えない、ウチナーンチュが好む味を徹底的に追求している。
その代表的な商品が骨付きフライドチキンの「フラチキ」だ。沖縄での大ヒットが、全国商品「ファミチキ」誕生のきっかけとなった。
「今でこそ考えられませんが、フラチキが誕生した2000年頃、レジ横のホットケースには、あまり商品が並んでいませんでした。理由は、売れないからです。そんなとき、商品部の担当が『沖縄の人はチキンが好きだから、チキンを置いたらいいのでは』と提案したのをきっかけに、食材から吟味しフラチキが誕生しました。店舗調理で作った矢先から飛ぶように売れ、1店舗で100本以上売れるヒット商品になり、全国のファミリーマートも注目し、フラチキを原点とする骨なしのファミチキの誕生につながりました」
今でも沖縄では骨付きの「フラチキ」が人気だと誇らしげに語る岸本さん。フラチキのヒットが弾みとなり、カウンターコーヒーの先駆けであるファミカフェも独自商品として根づかせている。全国仕様と違い、沖縄の「暑さ」と「車利用の多さ」を考慮し、氷は溶けにくいように硬さを調整し、豆も削り方や淹れ方を調整して沖縄好みの味に仕上げている。「ポーク玉子シリーズ」は、沖縄限定商品として毎年味を微調整しながら新作を用意。現在は新商品を含め約6種類を展開している。最近では、沖縄県民のソウルフード「沖縄そばシリーズ」を販売している。製麺を含めた一貫生産で度重なる改良を重ね、1日に何千個も売れるほどの大ヒットになり、手軽に楽しめる沖縄料理として定着。朝食用に開発した「朝すば」は、意外にも飲み会の締めとして人気を集めている。
そのほか泡盛コーヒーや、なかみ汁、やぎ汁などの「沖縄郷土料理シリーズ」を展開。まるで沖縄文化の小さなショーケースのような売場は、観光客だけでなく、新たな商品との出会いを期待する県民に、ワクワク感を与えてくれる。

失敗を恐れず、打席に立ち続ける文化
商品開発は、奇をてらうことなく、「県民が食べ慣れた味を、気軽においしく」を意識している。その一方で「打席に立ち続ける」チャレンジ精神も忘れない。失敗を恐れず挑戦の数を増やすことが成功に繋がるという考えのもと、定番商品を改善する「刷新」8割、新カテゴリーに挑む「チャレンジ枠」2割の2本柱で開発を進めている。
もう一つは「ベターの連続」による改善だ。ベストに満足せず、常に少しずつ改良を重ねる。定番商品も毎年味付けを調整し、時代の変化に応える。ブランドは磨き続けるものだからこそ、ベターを積み重ねる企業文化が、競争環境の中での強さを支えているのではないだろうか。

コンビニの枠を越えて社会インフラ整備にも貢献
コンビニの利便性を活かした社会インフラとして地域貢献にも力を注いでいる。サッカーやバスケットボールの大会協賛を長年継続し、子どもの頃からブランドに親しんでもらう「食育」を実施。琉球ゴールデンキングスとは、「沖縄を元気にしたい」という価値観が一致し、ラッピング店舗「キングスマート」を展開するなど強い連携を築いている。
家庭で余った食品を必要な人へ届けるフードドライブの推進活動にも力を入れ、受け入れボックスを設置。那覇市の3店舗から始まった活動は、社会福祉協議会との連携により123店舗まで拡大している。
地域ド密着プロジェクトでは、うるま市ともコラボしている。地元の人気商店監修商品や特産品・農産物を使った商品を販売。闘牛をメインモチーフとしたデザインを採用し、収益の一部をうるま市内の子ども支援活動に役立てている。
これらのコンビニの枠を超えた活動は、どれも「地域の一員」という誇りとこだわりから生まれている。

目的地化という次の挑戦
目指すのは、「どこでもいいコンビニ」ではない。キャラクターやアニメなど有名なコンテンツとの沖縄限定コラボも構想しながら、行く理由を積み重ね「目的地化」を目指している。
「『ここにしか売っていない商品を買うために沖縄のファミマに行く。』といった意味での独自性をもっと磨いていくことが、一番のブランディングになると思っています」と岸本さんは、同社にとってのブランド戦略の位置づけを話す。
物理的距離と心理的距離の近さを重ね合わせたとき、コンビニは目的地になるのではないだろうか。その実現に向けて、テレビCMやTikTok、Instagram、YouTubeなどターゲット層に応じてタッチポイントの幅を広げ、情報発信を行っている。
日常の象徴であるコンビニに、沖縄の人の温度をプラスして、ローカルであることを強みに変える。沖縄らしいぬくもりを携えて、「ファミンチュ」の挑戦は続く。
株式会社沖縄ファミリーマート
本社住所 〒900-0001 沖縄県那覇市港町3−4−18
WEB https://www.okinawa-familymart.jp/
Instagram https://www.instagram.com/oki_famima/
Tiktok https://www.tiktok.com/@okinawafamilymart
YouTube https://www.youtube.com/@okinawafamilymart